実は、ご家族が本当に困るのは、もの忘れなどの中核症状ではなく、こうした周辺症状のほうなのです。

中核症状のもの忘れが出て、同じことを何度も繰り返し聞かれると、確かにご家族は「しつこい! めんどくさい!」とイライラしますが、それでも、さほど実害はありません。

しかし、しょっちゅう幻覚を見て騒ぎだす、徘徊して行方がわからなくなる、暴言や暴力が出る、便を壁になすりつけるといった周辺症状が出てくると、ご家族は患者さんからひとときも目を離せなくなります。

こんな状態が、一体いつまで続くのか……。

終わりの見えないことが、介護家族をさらに苦しめます。

ですから、この時期に、施設への入所を考えるご家族も多いのです。

ただ、周辺症状が出た患者さんのご家族に、私が必ずお伝えしていることがあります。

それが、「周辺症状は、放っておいても必ず1~2年で落ち着く」ということです。

これ、知らないご家族が意外と多いんですが、介護者にとって本当につらい時期は、それほど長く続きません。患者さんの体力の低下と共に、周辺症状はどんどん減っていくのです。

介護者さんがこのことを知っているだけで、ずいぶんと気持ちがラクになるのではないかと思いますが、どうでしょうか。