患者さんは頭ではないどこかで、「誰よりも面倒を看てくれているのは、この人だ」とわかっているのではないでしょうか。(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)

どうやら、お金で苦労した経験がある方ほど、大切なお金に執着して、モノ盗られ妄想が出る傾向があるようです。

「なんで一番おばあちゃんの面倒を看ている私が、泥棒扱いされんといかんの?」

疲れた顔でそう言うのは、クワタさんのお嫁さんです。

90代のクワタのおばあちゃんは、ご主人の存命中は、一緒に農業をなさっていました。

もともとはおおらかで気風のよい、気持ちのいい方だったそうです。

それが、何年か前からもの忘れがひどくなってきたと思ったら、

「嫁が私の通帳を盗む」

「勝手に通帳から年金を引き出しとる」

そう言って聞かなくなりました。

しかも、それをご近所さんに吹聴してしまうのです。

もちろん、そんなことしていないお嫁さんは、

「なんで私がそんなことするの」

「通帳はおばあちゃんがいつも失くしちゃうもんで、お父さん(クワタさんの息子さん)が預かって、管理しとるんやらぁ」

と言うのですが、クワタさんは「嘘ばっかり!」と聞く耳を持ちません。