これ、不思議なんですが、「お金盗った!」と言われるのは、必ず患者さんの面倒を一番看ている人です。
たいていは娘さんか、長男のお嫁さんですね。
誰よりも尽くしているのに、そんなことを言われるなんて、面倒を看ているほうからすると、たまったもんじゃありません。
ただ……私は「アンタお金盗ったでしょ!」は、患者さんの「この人がいないと困る」の裏返しじゃないかと思っています。
患者さんは、いろいろなことがわからなくなっていく自分がとても不安です。だから、一番一緒にいてくれる人、一番頼りにしている人に、いつも意識が向いています。その人しか見えない状態だから、嬉しいことも不安なことも、起こったことはすべてその人に結びつけて考えます。だから、失くしものがあれば、「アンタが盗った!」となる。そういうことじゃないかと思うのです。
つまり、「お金盗った!」は介護の勲章。
もらって嬉しい勲章ではまったくないと思いますが……。
でも、患者さんは頭ではないどこかで、「誰よりも面倒を看てくれているのは、この人だ」とわかっているのではないでしょうか。