都内のボルダリングスタジオの壁を上る野口さん。撮影:小林ばく
8月20日、東京都八王子市でスポーツクライミング女子複合の決勝が行われ、野口啓代(あきよ)さん(TEAM au)が銀メダルを獲得し、来年の東京五輪代表に決まった。スポーツクライミング界を第一人者として引っ張ってきた、彼女の素顔とは(撮影=小林ばく 取材・文=吉井妙子)

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◆五輪の前哨戦で手応えを感じて

ここ2、3年、スポーツクライミングに対する注目度が大きく変化したと肌で感じますね。2020年の東京オリンピックで正式種目となったことに加え、日本チームは男女ともメダルの可能性が高いため、一気に関心が高まったのかもしれません。

私がクライミングを始めた頃は、そもそもスポーツだと認識されていませんでした。いわゆる「岩登り」の範疇で、アウトドアの趣味として親しまれていた印象です。私自身も最初はスポーツではなく、趣味として楽しんでいました。

ですから、ここまで爆発的にクライマー人口が増え、世界的に認知されるようなスポーツになるとは思いもよらなかったです。最近の人気ぶりには本当にびっくりしています。

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日本のスポーツクライミング界の草分け的存在である野口啓代は、世界屈指のクライマー。しなやかに鍛え上げられた体を駆使し、高い壁を自由自在に登る姿は、見る者に呼吸を許さないほど美しい。

スポーツクライミングが競技として採用されるのは、東京大会が初めて。3種目の複合形式で行われる。高さ15メートルの人工壁をいかに速く登るかを競う「スピード」、4メートルほどの人工壁に設置された課題(コース)のクリア数を競う「ボルダリング」、制限時間内にどれだけ高く登れるかを競う「リード」。

野口は、ワールドカップ(W杯)のボルダリング種目で年間総合優勝を4度達成してきた。東京五輪を、野口は31歳で迎える。

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昨シーズンは、東京五輪の2年前という時期を考えれば、まあまあ納得のいく成績でした。最も手応えを掴んだのは8月に行われたアジア競技大会。インドネシアで行われたこの大会は、各競技の出場者も東京五輪の前哨戦と位置づけていたようですね。

選手は選手村に入ることが義務づけられ、オリンピックと似た運営がなされたので、シミュレーションには絶好のチャンスでした。しかも、日本の夏と同じくらい、むちゃくちゃ暑かったし……。

W杯をはじめとするスポーツクライミングの国際大会は、スピード、ボルダリング、リードの種目ごとに行われることが多かったのですが、アジア大会は五輪と同じ複合形式。私には初めての環境に戸惑いつつも、金メダルを獲得できました。続く11月に行われたアジア選手権の複合でも優勝。この時期にアジアで2冠を達成できたのは大きな自信になったかな。

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●東京五輪の新種目「スポーツクライミング」

東京オリンピックは、男女各20人で争われる。各国からの出場枠は男女それぞれ最大2人。日本の開催国枠は存在しない。出場するにはまず、2019年8月に東京で開催される世界選手権の複合種目で7位までに入賞しなければならない。ただ、その後も選考大会が続く。

順位は「スピード」「ボルダリング」「リード」の順位を掛け算して算出したスコアで決定。数値が小さい選手ほど上位になる。3種目すべて3位の選手と、1種目1位であとが4位、6位の選手の場合、前者が27点に対し、後者は24点で後者が上位。つまり、得意種目を持つ選手のほうが有利になる採点法だ。

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