五輪内定の女性クライマー・野口啓代は父の壁で頂点を目指す

◆牛舎が産んだ アスリート？

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茨城県で牧場を営む両親のもとに生まれた野口が、このスポーツと出会ったのは小学５年生の時だ。家族で出掛けたグアム旅行で体験し、その魅力の虜に。しかし当時、日本には数えるほどしか施設がなかった。

中学に入ると、父が自宅の牛舎を改造し、本格的なトレーニング施設を作ってくれた。野口はめきめき腕を上げる。牛舎が産んだアスリートと言ってもいい。

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グアム旅行でたまたま立ち寄ったゲームセンターにクライミングの人工壁があったんです。子どもの頃から木や屋根に登って遊ぶのが大好きだった私は、楽々登ることができました。しかもこぶの変化が楽しくて。嬉々として遊ぶ私や妹を見た父は、帰国してすぐ、近隣のつくば市にクライミングジムを見つけ、私と妹を連れて行ってくれました。

中学に入る直前の春休み、父の勧めで全日本ユース選手権に出場したところ、中高生を押しのけて優勝。私より父がその気になってしまい、「中学生になったらジムに通う時間がないだろう」と古い牛舎を改造し、手製のプライベート・クライミングジムを作ってくれたんです。

懸命な父の姿を目の当たりにし、私も引くに引けなくなった。妹は中学に入ってすぐ、「部活が忙しい」と牛舎に来なくなりましたが、私は学校から帰ると毎日直行。せっかく父が作ってくれた壁なので、「やめられないな」というプレッシャーみたいなものはありましたね。

でも、単純に楽しかったんです。昨日登れなかったホールドに今日は到達した、あるいは昨日できたことが今日はできない……。自分の身体的変化、日々の成長を壁を通して感じることができる、そんなクライミングが。父は父で次々に大会を探し、私に勧めてきます。父の期待も、大きなモチベーションになりました。

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