90年代に日本の社会システムは大きく変わった

日本の社会システムが大きく変わったのは、今から約30年前の1990年代からだ。おそらく君たちのお父さん、お母さんが学生だったくらいの時代だろう。

『君はなぜ、苦しいのか――人生を切り拓く、本当の社会学』(著:石井光太/中央公論新社)

60年代から80年代にかけての日本は、世界でも類を見ないような経済成長を遂げた。特に80年代の後半はかつてないほどの好景気に沸いていた。当時活躍していたのは、ソニー、東芝、トヨタといった科学技術を駆使して事業を世界へと広げた企業だった。

企業のビジネスマンは、欧米に追い付け追い越せの精神で馬車馬のように働いていた。栄養補給ドリンクのCMでは「24時間戦えますか」のフレーズが流れ、毎晩終電近くまで残業し、休日を返上するのは当たり前。過労死もいとわぬ態勢で働いて、高性能の新商品を開発し、世界に送り出していった。

デジタルウォッチに、ウォークマンに、液晶カラーテレビ。そうした商品が世界で人気を博して市場を席捲(せっけん)したことで、「メイド・イン・ジャパン」の信頼性が高まり、日本に富が流れ込んできた。