そのときは、昔の話などを少しして別れたのでした。いつだったか風の便りで、子どもが幼い頃に離婚し、男手ひとつで育て上げたこと、浮いた話はひとつもないということを耳にしたのを思い出しました。
しかし2週間後、今度はバス停で遭遇。話の流れで携帯の電話番号を交換したものの、彼からも私からもかけることはなく、また偶然出会うこともなく2ヵ月が過ぎていきました。そして自転車で骨折した大みそかの夕方、突然彼から電話がかかってきたのです。
「どうしているかなと思って。元気かな?」との言葉。私は堰を切ったように骨折の顛末末を話し、手術をするなら地元に帰ってからのほうがよいかどうか迷っていることを伝えました。
彼は静かに耳を傾け、私の懸念や意思を尊重しながらアドバイスをしてくれたのです。ケガで弱っていた私にとって、それはとても頼もしいものでした。
彼からの電話が心の支えに
いざ入院すると、コロナ禍のため家族であっても面会できない状況。不安でいっぱいの私を支えてくれたのは、毎日かかってくる彼からの電話でした。会わなかった時間の穴埋めをするように会話を楽しむ私たち。
彼の誠実さ、思慮深さ、知性、判断力や決断力の高さ、そして私をとても大切にしてくれていることがヒシヒシと伝わってきて、心がウキウキと弾みます。いつしか私のなかで、彼が大切な存在になっていました。
もっと話したい、早く退院して会いに行きたい。そんな私の気持ちが伝わったのか、ある日、電話で彼と話しているとびっくり仰天する言葉が飛び出したのです。