修行僧として松山さんが歩んだ道のりとは――(臨済宗妙心寺派 松壽山不徹寺のTwitterより)
兵庫県・松壽山不徹寺の住職、松山照紀さん。松山さんは20歳の時に予期せぬ妊娠で大学を中退し、学生結婚・出産を経験。その後離婚してシングルマザーとなり、手に職をつけるため看護師を志す中で、終末期に立ちあったことをきっかけに、医療の限界や迷いを感じ48歳で出家。「すべての女性の駆け込み寺」を目指し、無料の電話相談を受け付けるなど幅広い活動を行っており、その実体験に基づく禅の教えに、心がスッと晴れるはず。そんな松山さんが、修行僧になった際のエピソードをご紹介します。

「美由紀」から尼僧「照紀」に

(編集部注:松山さんは34歳で正看護師になり、老人ホームで終末期と向き合う中で医療者の限界を感じていたところ、たまたま体験した座禅会をきっかけに、僧侶を目指すことになりました。そのころには2人の娘も自立しており、師匠より出家のための儀式である受戒を受け、京都・妙心寺に受理されて、48歳で僧侶としての道を進むことになりました)

僧侶として授かった新しい名は、師匠が選んだ一文字「照」と私の俗名「美由紀」の一文字ずつをとって、「照紀」。

あ、この時点では、ベリーショートでしたよ。

儀式の最中、師匠がカミソリを髪に当てて、切るまねごとをしてくれました。もしかしたらそのあたり、宗派によって違いがあるかもしれませんね。

ツルッツルに丸めたのは、2011年が明けてすぐ。女性専門道場がある岐阜の天衣寺(てんねいじ)に修行に行く2ヶ月前のことでした。

師匠に言われて美容院、ではなく理髪店に行ったんですが、ご店主が、もんのすごくためらって。

「お客さん……本当に剃ってしまって、よかですか?」って、何度も何度も聞かれましたね。

「どうぞ、お願いします」と答えたら、「あの……、順剃りにしますか、それとも逆剃りにしますか?」って重ねて尋ねられたんです。

順剃りは上から下に、逆剃りは下から上に髪を削いでいくそうで、逆剃りのほうが深く剃れるんだとか。

「逆剃りで!」と即答したら、絶句されて(笑)。

しばらくして気を取り直したご店主は、意を決してバリカンのスイッチを入れました。