携帯電話は”おあずけ”、食事も入浴も「数分」以内

日常生活にも、軍隊もかくやという制約があります。

携帯電話は修行が認められると同時に即没収され、”おあずけ”という名の金庫行き。

厳冬だろうが酷暑だろうが、移動は常に下駄履きで全力疾走。でも、ガランガラン音を立てると叱られる。

掃除は雑巾、はたき、竹ぼうきといった昔ながらの道具を駆使。落ち葉の季節は、掃いても掃いてもなくならない無間地獄をタップリ味わえます。

食事はそろって一斉に取り、長くて15 分。それも、お経を唱えて食べて、器にお茶を入れて、飲んで清めて、拭き上げて綺麗にして……という一連の流れを含んでの時間ですから、噛むというより、「飲む」が正解。

おかずは野菜の煮物。それに、贅沢品であるダシの入っていない味噌汁と、麦飯。「ほとんどノルマ」のおかわりが1回。

雲水は一度の食事で、どんぶりめし大盛り2杯くらいは軽く平らげるんじゃないでしょうか。じゃないと、体がもたないから。

食事当番である典座が回ってくると、さらに早く起きて支度することになります。今、ここに集中するという禅の教えに基づき、前の日に下ごしらえするのはほぼNG。大変でしたけど、わりと気に入ってましたね。

夏場、近所の農家さんからバケツいっぱいのトマトを分けてもらうと、トマトソースを仕込みました。

オリーブオイル? そんなリッチなものはなし。においのきついニンニクは、仏門にはもってのほか。お肉も論外。

でも、トマトがフレッシュなら、案外美味しいものが作れるんです。

カギは、じっくり炒めて甘味を引き出したタマネギ。これはOKやった。

あとは、隠し味のお砂糖。でも、お砂糖は道場で作れないから、買わなきゃいけないでしょう? あんまり使うと、「減りが早い」って先輩雲水から怒られちゃう。

一度、そうめんにトマトソースをかけてパスタみたいにして出したら、やっぱり先輩に怒られたなあ。

「誰だ! こんなヘンテコなもんをこしらえたのは!!」って。

けっこうイケる味だったのに。