相手を励ます言葉に欠けている重要なもの

たとえば先ほどのようなケースに対して、こんな反応をする方もおられるのではないでしょうか?

「そんなにいつまでもメソメソしていたら、天国のダンナさんが悲しむよ。それに、あなたが暗い顔してたって、周囲は誰も喜ばない。だから元気出して!」

もちろん、そんな言葉を返す人に、悪意はみじんもありません。むしろ、相手を励ましたいという善意に溢れています。

しかし、そこには重要なものが欠けています。

それは、「事実」です。

私は相談者さんのご主人を知りませんし、奥さんがいまだにメソメソしていることで、天国で悲しむかどうかもわからない。

まして、相談者さんが暗い顔をしているからと言って、周囲の人が喜ばないことをはっきり確認できるわけでもありません。

このふたつには、情緒はあるけれど実体がない。放っておくと、どんどん膨らむ想像や妄想に過ぎないのです。

そういった実体のないものは一切排除して、まずは相談者さんの今のお気持ちと、目の前に横たわっている事実だけを見つめる。

禅の教えにも通じるところがあります。

「あの人がいないと生きていけない」「もう、死にたい」という悲嘆の核心はどこなのか。