悲しみの核心に迫るための「意外なもの」

それを探り当てられるのは、悲しみに沈んでいるご本人だけです。

「ご主人がいないと、生きていけないと思っているんですね」

事実だけをもとに尋ねると、相談者さんは堰(せき)を切ったように口を開きます。

「そうなんです。あの人がおらんようになって寂しゅうて寂しゅうて、夜も眠れん。何を食べても美味しくない。テレビもつまらない。世界がすっかり色のないようになってしもうて……」などと。

ナースの経験を積んだ身からすると、たとえば、睡眠薬などで「不眠」を解消できれば、その方の気持ちがいくぶん軽くなる可能性も見えてきます。

やっぱり人間、眠れない・食べられないのは、追いつめられますから。

少しでも体が楽になれば、「もう、死にたい」という気持ちにも変化が表れるかもしれません。

悲しみから立ち直るためのカギを握っているのは、あくまでもご本人。

そのカギを、心にぽっかり空いた穴にカチリと差し込むお手伝いができるといいな、と思います。