溺れていたら、どちらを助けるかと考えてみる
これはいまから10年くらい前の話です。離婚相談に来たSさんは、ギャンブルで借金を抱えてしまった夫との関係がうまくいかなくなっていました。
子どもがいるからという理由で離婚という決断ができずにいたのですが、実家の親から離婚して児童扶養手当をもらったほうがいいと助言されたり、実家に帰ってくれば食べるくらいの面倒はみるからなどと声をかけられ、心が揺れに揺れていました。
そこで私は、「親とパートナーが溺れていたら、どちらを助けますか?」という深層心理テストをしてみましょうと提案したのです。
テストの結果、Sさんは「夫を助けます」といってから、「えー、私、夫を選ぶんだ」と自分でも驚いていました。
思うだけでははっきりとしない深層心理も、頭の中で情景を具体的にシミュレーションすることによって浮き彫りになるといわれています。自分にとって夫は大切な人なのだと気づいたSさんは、夫とともにがんばろうと決めました。
当時は一人だった子どもも三人に増え、毎年送られてくるSさんからの家族写真つきの年賀状を見るたびに、私は本当によかったなと微ほほ笑え ましい気持ちになるのです。