稚拙な文章が、あっという間に歌になる
宇崎 入部後、僕はあなたに作詞を頼んだ。
阿木 それまで詞なんて書いたことがなかったけど、私がちょこちょこっと何か書くと、すぐにあなたがメロディーをつけてくれて、それが面白かった。稚拙な言葉の羅列が、あっという間に歌になるんですもの。今でも覚えているのが、あなた、プレスリーの「ラブ・ミー・テンダー」の有名な英詞に勝手に違うメロディーをつけていたでしょう? あの頃のあなたは湯水のようにメロディーが浮かんで、とにかく作曲したい欲求が強かったのよね。
宇崎 そうでした。
阿木 新聞の見出しにも曲をつけているのを見て、こんな人がいるんだと驚いた記憶がある。親しくなって我が家に遊びに来るようになると、今度は私の両親や妹にも詞を依頼していたでしょう? この人は、詞を書いてさえくれれば誰でも良いのかなと(笑)
宇崎 ボキャブラリーが乏しいから、詞の方は自分で書くと、あっという間に限界が来てしまったんだ。でも、僕はあなたがクラブに入ってくれた瞬間に、「この人と結婚することになっている」と思った。出会った頃から「早く個人的に付き合いたいな」と願っていたけど、半年は我慢しようと(笑)。で、半年が過ぎてから「2人で会いたい」と電話をして。
阿木 私、その時共通の友人で入院している人がいたから、何人かでお見舞いに行くんだと思っていたの。そしたら駅にあなた1人しか立っていなくて、どうなってんだろうって(笑)。でも、そこからよね。やっぱり縁があったんでしょうね。