樋口恵子さん(左)と、上野千鶴子さん(右)(撮影:大河内禎)

強いられる利用者への負担

樋口 在宅介護の現場では、どんな課題がありますか。

上野 訪問介護では掃除、洗濯、調理などの「生活援助」と、食事や入浴、排泄などの「身体介護」があります。ところが「生活援助」を介護保険からなくそうという動きがあり、現場が大変困惑しています。

「体に触ると身体介護」、「触らなければ生活援助」ですけれども、実際の暮らしのなかでは、どこまでが身体介護でどこまでが生活援助か線引きできません。体に触れることなしに「生活援助だけして帰ります」なんて、現場ではやってられないですよ。ふざけていると思います。

樋口 人を椅子に座らせるだけでも、ちょっとは体に触ります。介護は、生活も身体的なこともあわせ、トータルにその人の生活をケアするものなのですから。

上野 そこを間違えているのに、「生活援助」だけを市町村の総合事業や住民団体などに移行させる、と。先ほども言いましたが、地域にそうしたサービスを提供できる態勢が整っているのか疑問です。16年と19年、厚労省の社会保障審議会に出された「ケアプラン作成の有料化」の改定案も大問題です。

樋口 ケアマネジャーが作る介護サービスの計画書「ケアプラン」はいまのところ無料ですが……。

上野 これがもし有料化すれば、申請の入口でハードルが高くなるでしょう。猛反発があったのでひっこめたものの、政府は改定する気満々です。お金のことでいえば、所得に応じての自己負担率の引き上げ。これまで1割負担だったのが、15年に高額所得者の場合は2割負担に。