母の言動がおかしいと気づいたのは、1年ぶりに千葉の実家を訪ねた2020年の6月。「ただいま」と家に上がると、昼間だというのにカーテンが閉め切られ部屋が暗い。

さらにお惣菜の食べ残しや箸が突っ込まれたままのカップラーメン、変色したバナナの皮などがあちこちに放置され、わが家はちょっとしたゴミ屋敷と化していました。

なかでもビックリしたのが、床を歩くと足の裏が砂でジャリジャリしたこと。部屋を片づけ始めた次の瞬間、私の顔面に何かが飛んできました。座椅子にポツンと座っていた母が投げた砂埃まみれのクッションです。

さらに、「余計なことするんじゃないよ、何様なんだよ! キィィィ!」という怒号まで飛んできました。

驚きましたし腹もたって、母にクッションを投げ返すと、向こうもそれを拾って投げつけてくる。汗だくで投げ合った後、母は「上等じゃねえか! 頭かち割って死んでやる!」と叫びながら2階に上がっていきました。

え? 今、死ぬって言った? 恐る恐る後を追うと、母は布団に横になっていました。寝るの!?

母のあんな言葉を初めて聞いた私は、居間に戻ると涙が止まらなくなりました。すると背後から、「最近、よく言うんだよ。口癖なのかな」という父の声が。

……そこにいたの!? 口癖かな、じゃなくて! 溢れていた涙が一瞬で止まりました。