移転前と同じように、新鮮な野菜や果物が人気

条件は、「表参道と同じ店舗構成ができる」「自然を身近に感じられる場所」の2点。

クレヨンハウスを続けるなかで、オーガニック野菜や製品の生産者たちとも親しくなりましたが、苦労しながら取り組んでいる方も少なくありません。取引先が1つ減るだけで、大きなダメージを被る場合もあります。ですから店舗の構成を変えるわけにはいかないし、私自身、変えたくはありませんでした。

迷いつつ、あちこち見てまわるなかで辿り着いたのがいまの場所。吉祥寺の街を見に来たとき、ふと子ども時代の記憶が甦りました。

母と2人、中野の小さなアパート暮らし。母は仕事が休みの日に私を井の頭公園に連れていってくれて、一緒におむすびと甘い卵焼きを食べるんです。

風が吹いて、池の表面に立った小さな波がキラキラと光るのを眺めているだけで、なんとなく幸せな気分になり……。言葉を交わさなくても、母と気持ちが通じ合うような気がしたものです。そんな子どもの日々を思い出し、「よし、ここにしよう」と心が決まりました。