エネルギーが上がる「足かせ理論」
たとえば名門の「ショパン・コンクール」など、いろいろなコンクールがあります。
ショパン・コンクールは、出場者は皆、ショパンの譜面を弾くわけです。
その人の才能を見るのであれば、好きなものを弾かせればいいと思うのですが、同じショパンの曲で競うわけです。
なぜなのかと考えたときに、「ああ、そうか」と思い当たる節があったのです。
それは、条件があればあるほど、足かせがあればあるほど、人はもがきます。苦しみます。
僕は、これを「足かせ理論」と名づけているのですが、その苦しみとは何かと言えば、苦しむことでエネルギーが高まります。
体温が上がります。ハードルが高ければ高いほど、エネルギーが高まるのです。
そのエネルギーに、需要があるのです。
お客様は、エネルギーを浴びたくて、そこに来ているのです。
それは、目では、耳では、「いい音楽を聴きたい」「いい芝居を観たい」ということでしょう。
でもそれなら、昔の名作ビデオやCDを観たり聴いたりすればいいはずが、なぜ昔につくられたものを、なぜ現代人が、芝居にしてもコンサートにしても観に来るのかといえば、そこにエネルギーがあるからです。
あがいているパフォーマーの熱が欲しいのです。そのエネルギーを観に来てくださっているのです。
これはヨーロッパでもアジアでも、現代でも大昔でも、ずっとそうだったのです。
※本稿は、『すべては出会い 渡辺徹の愛され人生』(きずな出版)の一部を再編集したものです。
『すべては出会い 渡辺徹の愛され人生』(著:渡辺徹/きずな出版)
芸歴 4 0 年を超える渡辺徹氏の、活動の軌跡を追う一冊です。
文学座に所属し、俳優業だけでなく、歌手、タレントなどとしてもマルチに活躍。
どんなに多忙でも、舞台にも立ち続けていたという渡辺氏の俳優としての思いとは?
これまでの講演会や対談などの記録から、渡辺氏の生き方、考え方に迫ります。