『それいけ!ゲートボールさくら組』で織田桃次郎役を演じる藤竜也さん(写真撮影:本社・奥西義和)

2023年5月12日から全国公開される映画『それいけ!ゲートボールさくら組』で、主人公の織田桃次郎を演じる、藤竜也さん。これまで大島渚監督の『愛のコリーダ』や北野武監督の『龍三と七人の子分たち』など、多様な作品でも知られる藤さんが、今回はゲートボールを主体とするスポコン人情コメディに登場。昭和・平成・令和と活躍し続ける81歳の藤さんが、作品や趣味のこと、夫婦円満の秘訣についても語ってくれました。

(構成◎かわむらあみり 撮影◎本社・奥西義和)

ベタで面白い映画になっている

映画のオファーを受けたときは、ちょうどコロナ禍になって、みんなが鬱々とした生活をしている最中。僕自身もね、あまり外出しないようにと友達とも連絡をしなくなって、鬱屈していたときでした。だからこそ、この『それいけ!ゲートボールさくら組』のような、明るくて空にわーっと伸びをする感じの映画が「いいなあ」と思いまして。

ただ、最初に脚本を読んだときに、こんなにベタな喜劇でいいのかな、これはうまくできるかな、と。喜劇って難しそうでしょう? でも、「ベタで面白い」映画になっているところが、すごいですよね。だいたい「あの映画ベタだからさあ」とか、ベタってちょっとネガティブな印象を持ったときに使う人が多い。だけど、今回は「面白い」と言ってくださる方が多くて、非常にうれしいですね。これは監督の力ですし、きっとみなさんからの感想を聞くと、監督は「やった!」と思うはず。

僕が演じた織田桃次郎は、過去にラグビー部のキャプテンをやっていた人物。でも、僕自身はリーダーというタイプではなく、一匹狼のほうが気持ちがわかるんです。だから、リーダーってどういうことなんだろうなと考えると、みんなの話を聞いて、意見を調整して、最後に決断を下す役割なんだろうなと。とはいえ、なんでもいいから自分の思い通りにやろうとするのではなく、みんなそれぞれの自我があるから、その調整をするということですね。

桃次郎は学生時代のラグビー部のマネージャーだった木下サクラと再会して、彼女が経営するデイサービスの危機を救うためにゲートボール大会の優勝を目指すという、度量の広い性格。でも、同居する息子夫婦と孫からは煙たく思われているのも、リアルですよね。桃次郎は外ではリーダーっぽいけれど、家ではちょっと違った感じでもいいだろうなと演じています。家でも好きなようにやる人物だと、やっぱりつまらないですよね、多面的な顔があるほうがいい。彼がゲートボールの試合で頑張っていることを家族が知るにつれて、だんだんと家族仲は変化していきます。

(C)2023「それいけ!ゲートボールさくら組」製作委員会