ドラマの中で迷い続ける家康。本郷先生曰く、実際の家康と決定的な違いがあると感じているそうで――(「関ヶ原勇士軍賞之図」作:月岡芳年)

松本潤さん演じる徳川家康がいかに戦国の世を生き抜き、天下統一を成し遂げたのかを古沢良太さんの脚本で巧みに描くNHK大河ドラマ『どうする家康』(総合、日曜午後8時ほか)。第15回では、命からがら藤吉郎(ムロツヨシさん)と共に金ヶ崎の激戦を生き延びた家康だったが、休む間もなく、信長(岡田准一さん)から浅井・朝倉討伐の先陣を申し付けられる。そんな中、浅井長政(大貫勇輔さん)から「ともに信長を討ちとろう」と書かれた密書が――といった話が展開しました。

一方、歴史研究者で東大史料編纂所教授・本郷和人先生が気になるあのシーンをプレイバック、解説するのが本連載。第34回は「ドラマの家康と実際の家康の違い」について。この連載を読めばドラマがさらに楽しくなること間違いなし!

否定的な感想が目立つ前話

ドラマの最新回では姉川の合戦が描かれました。

しかし、その前の話で触れ、見どころと思われていた「金ヶ崎の退き口」がナレーションのみで終わったり、戦の中にあって相変わらず優柔不断さが目立つ家康の様子に、ネット上ではどちらかというと否定的な感想が多くみられるように感じています。

踏まえて、今回の著者の記事は前話の解説というより感想、そしてややネガティブなものになってしまいました。

ですので前提として「そういったものは求めていない」という読者の方はスルー推奨です、とお断りを入れたうえで以下読み進めていただけると幸いです。

さて、まれにですが、ぼくのもとに「小学生へ歴史の話をして欲しい」という依頼が届きます。

ぼくはそもそも「歴史好き」を少しでも増やしたい、という願いを持っていますので、そうなってくれる可能性の大きい小学生とのふれあいは、できる限りがんばっています。機会あればどうぞご用命下さい、という営業(?)はここでは置いておくとして。

理想としては子供たちに囲まれて、和気藹々と歴史の話をしたい。でも、子どもたちに淡々と歴史の話だけして盛り上がるのは難しい、と感じているのも事実。

現実として、集中力がなかなか続きませんし、興味を持ってもらうのにもひと苦労です。そこでぼくが編み出したのが、冒頭で「これいくらだ?」と一万円札をひろげて見せるパフォーマンス。