「一万円札」と「徳川家康」

「当たり前のことを。一万円でしょ?」

なんなら「そんな話はいいからちょうだい」といった声が挙がるのを待って、「聞いていると『一万円』って声が多いね。でもね、当たり前のことをわざわざ質問するのは、変だと思わない?」と言葉を重ねる。

すると怪訝な顔をしながらも、あれこれ気がつく子どもが出てくる。

「先生が聞いてるのは、もしかしたら一万円札を作るのにいくらかかるか、ということなの?」

そう、その答えを待っていた!

「そうなんだよ。実は一万円札は30円あればできるらしい。たった30円! その紙切れが、北は北海道から、南は九州・沖縄まで、1万円として使える。すごいと思わない?30円の価値しかない紙が、1万円としてみんなに使われる。差し引き9970円。これが日本の政府の信用であって、信用っていうのはそれだけ大切なものなんだよ」

ここまで話すと多くの子どもたちが「信用」について理解を示してくれます。そのうえで…

「それでね、この信用を武器にして、天下を取った人物がいる。誰だと思う? それが徳川家康なんだ」と、そこから家康についての話を始めるようにしています。