歯には苦労してきた

歯には苦労してきた。

遺伝もあるのかもしれないが、歯磨きだって、きちんとしていなかったし、むし歯になっても治療を先延ばしにしてきた。むし歯は少しずつ進行していたんだと思う。

歯に痛みが出る時は決まって、忙しく体力的にも落ちた時だ。今かい!って時に痛くなり、ボルタレンやロキソニンを飲んでも、また痛みであぶら汗が出てきて集中できないわ、寝られないわ、もう耐えられない!と半泣きで歯医者さんに行き、
「痛いんです、あの時、数年前になりますか、治療をしていたらよかったんです、すみませんすみません」
と、イスはフラットに倒されているのに、腹筋を使って起き上がり、馴染みの先生に謝った。

「ですが先生、今日のところは、一時的な治療で、痛みだけ止めていただいて」
「薬、詰めてみますね」
「ありがとうございますありがとうございます」
「痛みが治ったら、しっかり治療しましょう」
「……」
「聞いてますか?」
もちろん聞いているが、返事をする勇気と元気がない。

「青木さん、一度、寝ながら、やってみますか?」
「寝る、とは」
「麻酔の先生に来ていただいて、半分ボーっとしながら、ほとんど寝てるような感じですけど」
話を聞いてみると、静脈注射をしながら寝ているような状態で、一度に数本の歯の治療ができるのだという。恐怖心を持つ方にもいい。なかなか進まない神経の処置も一気にできてしまう。わたしはその時、インプラントにしようかと考えている時だった。