インプラントにしたらどうか
前歯が変色してきたこと、欠けてしまっていること、芸能人は歯が命だし(懐かしい!)前歯数本はインプラントにしたらどうか、と提案されていたのだ。テレビに出るときは、歯には気をつかう。視聴者の人は歯を見ている方は多い、というのはわたしの印象だ。
「マイケルジャクソンも」
「え?」
「マイケルジャクソンも、この注射よくしていたそうですよ」
「歯の治療で?」
「いや、歯ではなくて、眠る時に」
「マイケルジャクソン、大好きでして」
「頑張りましょう!」
「ディスイズイットディスイズイット」
わたしがうわ言のようにマイケルジャクソンの曲の名前を呟いた時には先生はすでに隣にいなかった。
ひと月後、同じ椅子にわたしは、いた。麻酔医に血圧を計ってもらい、麻酔を打つ前に矢継ぎ早に質問した。意識はあるのか?痛みはあるのか?本当に寝るのか?話をしている最中から記憶がなく、次に気がついた時は、前歯のインプラントの土台の治療と奥歯の神経の治療は終わっていた。ボーっとサンダルを履き、お会計を済ませた。
帰りは運転はしないでくださいね、ということだったのでタクシーで帰った。麻酔がきれると痛みが一気にきた。ボルタレンでなんとか抑えられる痛みではあった。数日はきつかったが、しばらく経つとおさまった。
インプラントの歯は、はじめ違和感があったが徐々に慣れてきた。自分の歯で食べた方が美味しいからインプラントにすると食欲が落ちて痩せるよ、と友人に聞いていたが、そんなこともない。太る時は太るし食べ物も美味しい。有り難いのは大きな口をあけて人と話せるということだ。歯が美しいというのはわたしにとっては自信に繋がるものだった。