大人の女性をメインターゲットにした「女子マンガ」。マンガ研究者のトミヤマユキコさんいわく、「恋愛だけではなく女の人生の大変さなども描かれるなかで、現代女子が生きていくためのヒントを見出せることも特徴の一つ」とのこと。多くのフィクションでは、キャラを立てるために優遇されがちな主人公。でも、最初からキラキラしたヒロインを描くのではなく、世界の中心にいない“ただの女”をヒロインにしたマンガから分かることとは――。
ただの女は卒業できる
ヒロインが「ただの女」じゃダメなのか、世の中はモブキャラ(脇役)だらけなのだから、社会のリアルを体現するようなヒロインがいてもいいんじゃないか―そんな風にお考えのそこのあなた、どうか安心してほしい。女子マンガには、ただの女が主役を務めるパターンがけっこうあるのだ。
彼女たちは大きく2種類に分けられる。ただの女を「すぐに卒業するタイプ」と「なかなか卒業しないタイプ」だ。
ただの女をすぐに卒業するのは、何らかの潜在能力を持った女である。メガネを外したら美人だったとか、音楽・絵画・スポーツ等をたまたまやってみたらめちゃくちゃ上手だったとか、とにかく、「こいつただの女かと思ったらそうじゃなかったわ!」となる瞬間が描かれていればOKである。
その瞬間があまりにも早く来てしまうと、最初からわかりやすくキラキラしているのと変わらないため共感しにくくなるが、「魔法」を使う場合だけは例外。『シンデレラ』の例を出すまでもなく、魔法はいつの時代も究極の便利ツール。
一瞬にして見た目が変わったり、不思議な力が使えるようになったりしてもOKである。努力をせずにただの女を卒業できるなんて、ちょっとチートっぽいけれど、この棚ぼた感が魅力だとも思う。