2000年、晩年まで公務に勤しんだ皇太后の100歳の誕生日。妹のマーガレット王女(左)と母・エリザベス皇太后(中央)(写真提供:アフロ)

女王を悩ますのは、むしろ家庭内トラブルだ。次男アンドルー王子は、アメリカの実業家ジェフリー・エプスタインと交流し、未成年少女への性虐待で訴えられた。示談金約18億円で裁判所への出頭は免れたが、支払いは女王とチャールズ皇太子で負ったという。

かつてフォークランド紛争では、危険な任務を成功させ一躍英雄になった王子だが、現在は国民の前に顔を出さないよう厳しい措置が取られている。

それに、孫息子ヘンリー王子と妻メーガンさんの王室離脱があった。結婚2年もしないうちにカリフォルニア州に移住。オプラ・ウィンフリーさんが行ったインタビューで、王室への恨みつらみを暴露した。人種差別を受けたとか、自ら命を絶つことを考えるほどつらかったのに何もしてくれない冷淡さだったなど、女王としては耳を疑うような言葉ばかりだったろう。

女王は、離脱に伴い王子の名誉職を解任、メーガンさんのパトロンを解いた。アメリカでの警備費の支払いもない。しかし「家族の一員であることを忘れないで」と伝える。

君主としての「公」と慈愛深い祖母である「私」の一線の引き方が見事であると、国民の称賛はやまない。それだけに女王「後」を心配する声がある。皇太子に女王と同様のオーラとカリスマ性が示せるだろうか。

多賀幹子(英国王室ジャーナリスト)