還暦過ぎて、デビュー当時の楽しさを取り戻す

昨年、還暦を迎えたので、俳優としての人生もかれこれ45年たちました。60代って、もっと落ち着いているものだと思っていたけれど、実際になってみたらぜんぜん違いましたね。むしろ、赤ちゃん返りをしていると言いますか。

ひょんなことからオーディションを受けて、『博多っ子純情』でデビューしたときはズブのシロウト。演技のことなんて何も知らない16歳の少年だった自分が、いきなりポーンと映画の現場に投げ込まれ、「走れ!」「笑え!」と大人たちに言われて、思いきり遊んでもらえたのがたまらなく楽しかったんですよ。

プライベートのファッションがおしゃれで話題の光石さん。愛犬・グリグリ君をカバンに入れて(光石さんインスタグラムより)

プロの俳優になってからは、なかなかあの楽しさは味わえなかったけれど、それでもあの楽しさをずっと追い続けているような気がします。とくに、60代になってからは、その思いがますます強くなりました。30代から40代にかけて、それなりに厳しい時代もありましたけど、自分には俳優の仕事以外は何もできないからとしがみつき、今やっと、デビュー当時の楽しさを取り戻せるようになった気がします。

少し前までは、人生の最後まで役者をやりたいと思っていたんですよ。でも、現場で迷惑をかけるようになったら身を引くことも、近頃は考えるようになりました。僕らにはセリフを覚えるという作業があるでしょう。これが満足にできなくなったら、現場で多大な迷惑をかけてしまいますからね。

とはいえ、多少体力が衰えたとしても、頭が動くうちはまだまだ撮影現場に通い続けたい。おじいちゃん役も、ぜひやってみたいですね。笠智衆さんのような「おじいちゃん役の名優」と言われる先輩たちを見習って、これからも様々な役に取り組んでいけたらと思っています。

『逃げきれた夢』
6 月 9 日(金)より新宿武蔵野館、シアター・イメージフォーラムほか全国ロードショー


出演:光石研
吉本実憂 工藤遥 杏花 岡本麗 光石禎弘
坂井真紀 松重豊
監督・脚本:二ノ宮隆太郎
製作総指揮:木下直哉  
プロデューサー:國實瑞惠 関友彦 鈴木徳至 谷川由希子
撮影:四宮秀俊 照明:高井大樹 録音:古谷正志 美術:福島奈央花
装飾:遠藤善人 衣装:宮本まさ江 ヘアメイク:吉村英里  編集:長瀬万里  
音楽:曽我部恵一 助監督:平波亘 制作担当:飯塚香織
企画:鈍牛倶楽部  製作:木下グループ  配給:キノフィルムズ  制作プロダクション:コギトワークス
©2022『逃げきれた夢』フィルムパートナーズ
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