残業することが美学

いや、もっとシビアな調査結果もあった。厚生労働省の改革若手チームがまとめた、緊急 提言(19年8月)のような生々しい訴えが話題になった。

『事務次官という謎-霞が関の出世と人事』(著:岸宣仁/中央公論新社)

「厚生労働省に入省して、生きながら人生の墓場に入ったとずっと思っている」(大臣官房、係長級職員)

「家族を犠牲にすれば、仕事はできる」(社会・援護局、補佐級職員)

「残業することが美学(中略)という認識があり、定時に帰りづらい」(労働基準局、係員)

言うまでもなく、厚労省は旧厚生省と旧労働省を統合して生まれた組織だ。

職員の労働環境の整備に最も精通しているはずの官庁、しかも労働時間の管理を主な業務にする労働基準局の一職員が、「残業することが美学」という日本人の精神性を打ち破れないところに官僚としてのジレンマが表れている。

それにしても、なぜ、ここまでキャリア志望者が激減し、キャリアの仕事が不人気になったのか。先述したいくつかの理由のうち、近年とみに若手を悩ませているのが、国会待機をはじめとするブラック職場の実態が一向に改善されない点にあるのは明らか。

官僚の長時間労働の元凶として、長年指摘され続けてきたものの、本格的な見直しに結びついていないのが現状である。