岸さん「官僚の威信低下は、志願者数の減少として表れている」と言いますが――(写真提供:Photo AC)
同期入省の中から30数年をかけて選び抜かれたエリート中のエリートである事務次官。だが、近年、セクハラ等の不祥事で短命化が進み、その権威に影が差しているという。官界の異変は「裾野」でもみられ、ブラックな労働環境や、若手の退職者増加など厳しさを増している。そんな大きな曲がり角を迎えている霞が関を長年取材し続けているのは、経済ジャーナリストの岸宣仁さん。その岸さん「官僚の威信低下は、志願者数の減少として表れている」と言いますが――。

激減するキャリア志望者

官僚の威信低下は、志願者数の減少として表れている。

国家公務員試験の総合職(キャリア官僚)志望者が過去最少を毎年更新しているのだ。

2022年度の申込者数は1万5330人と、前年度と比べて7%程度増えたものの、総合職試験を導入した12年度以降2番目に少なかった。

「キャリア」と呼ばれる幹部候補生向けの国家公務員試験は、戦後、甲種→1種→総合職と変遷を辿ってきた。いずれも超特急で出世するエリートの採用に変わりはなく、公務員人気は根強いものがあったが、近年は減少傾向に歯止めがかからず、今や4万5000人を超えた96年度の3分の1程度だ。

その背景には、90年代半ば以降の相次ぐ官僚不祥事、省益重視による縦割り行政の弊害、国会業務対応(国会待機とも言う)をはじめとするブラック職場の現状など……、いくつもの要因が挙げられる。

(1)自己実現可能な魅力ある仕事に就きたい、(2)仕事と家庭の両立が難しい、(3)民間と比べて収入が少ない―といった率直な回答が寄せられるのが常だ。