どの枝をむしれば、どんなふうに残った枝が伸び、どう花が咲くか。細かく観察して、育ち方を想像し、むしり取る枝を決める(撮影:本社・奥西義和)
明治から続く盆栽園をひとりできりもりする山本千城子さん。日本盆栽協同組合で、女性唯一の盆栽技能保持者でもある。73歳の山本さんが語る奥深さは──(取材・文:篠藤ゆり 撮影:本社・奥西義和)

前編よりつづく

盆栽の仕事は子育てに似ている

盆栽の仕事は、毎日休みがない。しかも従業員は自分ひとり。「相手が生きているものだから、手を抜けない」と山本さん。

植え替えも重労働だし、1000鉢を超える水りだけでも大仕事。その水やりにも、技術が求められる。

植物の根は、水が足りないと、水を求めて伸びていく性質がある。そこで山本さんは春に水を控えて、木が細かい根を増やすよう促す。もし、春のうちから水や肥料を多く与えてしまうと、怠けて細かい根が育たず、夏の暑さで負けてしまう。

「若いうちに厳しい環境で育てると、植物は知恵を働かせる。一方、厳しくしすぎると、いじけてしまう。のびのび育て、力をためさせることも必要。人間も同じじゃない?」