興味がなければ知識がないのは当然のこと

ところで、両国国技館の周辺は、相撲の街としての雰囲気がある。JR両国駅には相撲にまつわる掲示や広告があり、同駅西口から徒歩3分の回向院は、江戸時代から相撲の興行があった場所で、歴代力士の慰霊碑「力塚」があることでも有名だ。回向院に向かう国技館通り沿いには力士の像もある。ちゃんこの店も多い。先日、その街を歩いていたら、相撲観戦に行く外国人だけでなく、周辺を観光する外国人がたくさんいた。

そして、外国人たちを連れた「見事な」日本人ガイドに出会った。外国人たちが、国技館の建物、力士のぼり、国技館の外にある大相撲の大画面の掲示パネルなどを見て感激して質問するのに対し、そのガイドは、「ジャパニーズ スモウレスラー グレイト」だけを力強く、何度も繰り返していた。それ以上の説明がないのだ。

相撲の街ならではの国技館の屋根に似た「横綱横丁」(両国駅東口商店会)の看板。後ろに見える黄色い電車は両国駅に止まるJR総武線

かなり前だが、国技館の椅子席で相撲を見ていたら、外国人3人を連れた日本人男性が近くにいて、外国人たちに質問され、「行司は、力士が年を取ったらなる」をはじめとして、度胸よく誤り連発の説明をしていた。私は、「早く入口でもらった外国語のパンフレットを見よ」と願いつつ耐えていた。

都営地下鉄浅草線に力士が乗り込んで来て、車内に鬢付け油の香りがしてきたことがある。日本人男性が、友人らしき外国人に質問され、「着物に香りをたき込めている」と教えていた。髷を結うための油の香りとは知らず、優雅な想像力に度胸も加えて伝えていた。

大相撲に興味がなければ、知識がないのは当然で別に悪いことではない。私も他のスポーツのことは無知だ。しかし、なぜか外国人に質問されると、答えられないのは日本人として恥ずかしいと思ってしまう人がいるようだ。だから無理して知識もなく答えて誤解を生む。大相撲は国技だからだろうか?謎だ。誤りを教える人よりも、「ジャパニーズ スモウレスラー グレイト」を連発した人に、見事な度胸を感じた。

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