後身を育てるのも 役目と思って
意思に背いた撮影を強要され、「NO」と言えずに傷ついた経験の浅い俳優や、それをわかっていたのに止められなかったことで苦しむスタッフは少なくない。
ある程度の性的な描写があると納得して仕事を受けても、細かく詰めていけば「そこまでやりたくない」という思いは出てきます。そんなとき監督やプロデューサーに直接説得されれば、折れてしまう人もいるでしょう。
若かったり、キャリアが少なかったり、もっと仕事がほしい思いがあったりすれば、強気で拒むのは難しいはずです。
日本の映画業界で、多額の興行収入があるいわゆる「大作映画」監督のジェンダー比率を見ると、いまなお97%が男性です。もちろん男性の監督が悪いわけではないし、俳優と丁寧なコミュニケーションを取り、信頼関係を重ねてこられた方がほとんどだと思います。
ただ、ある程度の地位にある男性には絶対的な権力が伴いがち。一部の監督やプロデューサーにとって私たちの仕事はまだ受け入れがたいもののようですが、「丁寧なコミュニケーション」による説得に強制力が一切なかったと言えるかは、権力を持つ側の人間が判断してはいけないと思うんです。