たとえば、自分は勉強ができると思っていた(期待)けれども、試験に合格できなかった(現実)。このときに「現実の自分を否定する」感情が起こります。それが「恥」という感情です。自分を否定する感情なので、「恥」を感じ続けることは、自己否定につながります。だから人は自分を守るためにも、恥をかかないようにしようとします。

そして恥をかくと、それを否定するかのように自信たっぷりに振る舞ったり、本当は自分は期待以上の人間であるとアピールしたりするわけです。

こうした行為は防衛本能の一種ですが、本人も周囲もそのことに気づいていない場合があります。身の丈以上に自分を過信したり、周囲も「自信のある人なんだな」「すごい人なんだな」と思ったりということが起こります。

 

人と対話するときに、自分を身の丈以上に見せようとする「マウント取り屋さん」も同じです。恥をかかないように、理論武装で自分を守ります。恥ずかしい部分を隠すために、パワーを誇示します。

そのとき対話の意識は相手のほうを向いているのではなく、「恥を見せない自分」のほうに向いています。自分の不足を埋めるための対話なので、ある意味対話になっていないのです。

そういう人と話していると、その人の考えのなかに入っていこうとしても、なかなかうまくいきません。結局、表面的な話にしかならず、疲れてしまいます。

 

※本稿は、『私らしい言葉で話す 自分の軸に自信を持つために』(著:SHOWKO/CCCメディアハウス)の一部を再編集したものです。


私らしい言葉で話す 自分の軸に自信を持つために(著:SHOWKO/CCCメディアハウス)

言葉で考え、言葉で分かち合う私たち。
言葉を磨くことは、感性を磨くこと。
――『感性のある人が習慣にしていること』のアーティストによる、言葉と向き合う61のレッスン

「自分に自信が持てない」「ネガティブな感情に流されがち」「感性のある人になりたい」「人と話すことに苦手意識がある」「豊かに人生を生きていきたい」……そんな悩みに、すぐに実践できるノウハウを多数収録