手前右から時計回りに麴に漬けた鹿児島産の春子、インドマグロの大トロの漬けは、わさびの代わりにマスタードをトッピング。肉のような味わい。細かく切れ目を入れることで甘みを引き出したアオリイカは伊豆下田産。鹿島産の小粒な煮ハマグリは軍艦で。小ぶりゆえ軟らかく、ワタまで食べられる。そして愛知産の平貝。写真はすべて5000円のランチコースから

 

名人がひと手間かけたお値打ち鮨

鮨バブルと言われて久しい昨今、ランチでも予算1万円クラスの高級店がザラ、という中にあって、握り15貫を5000円で味わえるお値打ちランチを花の銀座で発見! 歌舞伎座の裏手、オープン2年目を迎えた「鮨弁慶 海」がそれだ。

「最近の鮨は高すぎる。5000円でも手間のかけ方次第でこれだけ楽しめるっていうことを、発信していきたいですね」との頼もしい一言は、大将の山崎正夫さん。鮨一筋50年の大ベテランだ。今から10年ほど前までは、六本木芋洗坂の「鮨 山海」で鮨通を唸らせていた名人だけに、味のほうは推して知るべし。この店は、新潟でもクオリティの高さで人気の廻転寿司店「弁慶」のオーナーに請われ、その旗艦店として銀座に出店。

 

手前から、千葉産キスの麴漬け、インドマグロの赤身は切りつけて、オリジナルの漬け醬油にくぐらせてから握る。赤海老の昆布締め。10貫3000円コースもある

 

リーズナブルで美味しい握りが身上だ。15貫の中身は、江戸前鮨定番のコハダや穴子はもとより、ウニに大トロ、炙ったのどぐろなど内容も充実。国産を使うと高くなるマグロはインドマグロをひと工夫。脂の強い大トロは湯霜にかけ、わずかににんにくをきかせたたまり醤油に漬け、一見、ローストビーフの如く仕上げている。また、麹漬けの春子や昆布締めの赤海老などひと手間かけることで旨味を引き出す手法はさすが。夜のコース1万円からも見逃せない。