「今も、ふとした瞬間に弱気の虫が出てくるの。いくつになっても未熟者。修行が足りませんなあ」(撮影:福森クニヒロ)
広島県尾道市の山間の町で、畑仕事をしながらひとり暮らしをしている石井哲代さん。何気ない生活のなかに、日々の活力を生み出すアイデアが溢れていました(構成=野田敦子 撮影=福森クニヒロ)

3度の入院を乗り越えて

4月29日に103歳になりました。自分でもびっくり仰天。この年でひとり暮らしをしている人は、そう多くないでしょうな。傍から見たら、冒険や挑戦に映るかもしれません。

でもね、何の変哲もない一日を繰り返してきただけなんですよ。やるべきことをいくつも作って、一つひとつこなしてきただけ。

朝食に味噌汁をこしらえ、畑に出て草取りをし、毎晩、仏壇にお経をあげて、日記をつけ、贈り物をいただけば礼状を書く……そしたら、あっという間にこの年になってしまいました。

そんな私も100歳になる年の正月は、何とも言えず胸が苦しくなったもんです。年齢が3桁になったことで、改めて老いを突きつけられた気がしたんでしょう。

今も、ふとした瞬間に弱気の虫が出てくるの。いくつになっても未熟者。修行が足りませんなあ。

2021年、足の感染症(下腿蜂巣炎)で2度入院し、退院後しばらく姪(哲代さんの弟の娘)の弥生さんの家でお世話になったときは、これまでになく心が揺れました。本心では家に帰りたい。でも、自分の「したい」に固執したら、みんなを心配させることになる。