「腕を見てるつもりが、いつの間にか足を見ているんだ」(篠塚)
篠塚 打席からじゃないけど、俺が一番速いと思ったのは山口高志さん(元阪急。1975年の新人王で同年阪急初の日本一に貢献)かな。
槙原 僕も映像で見ただけですが、山口さんは確かに速かったです。小さい体(身長170センチ)を目いっぱい使って投げていましたね。
川口 あの当時のストライクゾーンって、かなり高かったじゃないですか。胸のあたりまでストライクで、ヒザあたりは全部ボール。山口さんは高めのボールに威力があって、みんな顔のあたりのボール球でも手を出してましたよね。
定岡 1975年の日本シリーズは、山口さんと広島の外木場義郎さんの投げ合いがすごかった。
川口 外木場さんも速かったですね。あの当時のテレビ中継って、バックネット側のカメラで撮っていたからよく見えなかったけど、それでも外木場さんのボールはホップしている感じがあった。
定岡 外木場さんは鹿児島の先輩だけど、僕の一番の印象は風貌なんだ。もみ上げがすごくて、山賊みたいだなと思っていた。
篠塚 山賊に会ったことあるんですか。
定岡 あるわけないだろ!
川口 カープの先輩で、俺に初めてゴルフを教えてくれた人でもあります。
定岡 シノ、大投手の江夏豊さん(元阪神ほか)は速かった? 対戦あるでしょ。
篠塚 僕が対戦したときは広島時代と日本ハム時代で、全盛期じゃなかった。「うまいな」とは思ったけど、「速いな」はなかったですよ。
川口 同じ速いと言っても球質はみんな違いますよね。
篠塚 そうだね。小松だったら、低めで落ちるんじゃないかなっていう軌道から、落ちずにズーンと来る。
定岡 マキの若手時代も速かったよ。球はドン!って感じで、バッターはすごく重く感じたんじゃないかな。
川口 俺はマキにバントしかしなかったんですよ。真っすぐもスライダーも打てっこないから。でも、広島時代、しょっちゅう対戦したよな。
槙原 そうでしたね。川口さんは巨人に強かったし、うちは(右のサイドスローの)斎藤雅樹が左打者の多かったカープにあまり投げなかったんで、自然と僕の登板が増えた。1対0みたいな試合ばっかりでしたよね。でも、途中から同じ左腕だけど、大野豊さんに変わり、今度は大野さんばっかりになりました。
定岡 大野さんのカーブって、すごく曲がってなかった?
槙原 大野さんは僕に力を入れて投げてこなかったんで分かりません。左腕のカーブの曲がりなら、ヤクルトの梶間健一さんじゃないですか。梶間さんのカーブはすごく曲がっていた。しかも、足がすごくでかく見えるんですよね。
定岡 足を大きく上げて、しかもステップした足をかかとから着くんだよね。
篠塚 意識してかどうか知らんけど、あの足が気になって仕方なかったね。腕を見てるつもりが、いつの間にか足を見ているんだ。