「中井さんのけん制の話はジャイアンツの伝説です」(槙原)

川口 ヤクルトの左腕だと、球は速くないけど。ボンボン投げてくる安田猛さんもいましたよね。『がんばれ!!タブチくん!!』(西武時代の田淵幸一さんをモデルにした人気漫画)でおなじみの。

槙原 左腕でテンポがいいとなると、僕はテレビで見ていただけですが、中日の松本幸行さん(1974年Vイヤーの最多勝)は早かったです。

川口 俺のデュプロ(社会人時代)の先輩ね。俺もテレビで見ていた世代だけど、あの人が投げると、試合時間がすごく短い。2時間切ったこともあったんじゃなかったかな。

定岡 松本さんは、キャッチャーが投げた球を捕ったらすぐ投げるんだ。サイン見てるのかなって思うくらい。

川口 キャッチャーの返球のほうが松本さんの真っすぐより速いって言われてましたよね(笑)。

篠塚 松本さんと言えば、中井康之さん(元巨人。投手として1973年にドラフト1位で入団し、外野手に転向)でしょ(笑)。

槙原 あの、けん制の話ですか。ジャイアンツの伝説ですよね。

川口 何それ?

篠塚 代走で一塁に行くとき、コーチの国松彰さんから「あいつはけん制がうまいから、ベースから離れるな。盗塁はいらんから、リードするより戻ることを意識しておけ!」って言われ、中井さんは「はい、分かりました!」って元気よく行ったのに、一発で、けん制アウト(笑)。

定岡 うん、松本さんの1球目でね。

篠塚 しかも、ベンチに帰ったら開口一番、「あのピッチャー、けん制うまいですね!」って言って、国松さんに怒られた、怒られた(笑)。

後楽園球場前のサダさん(右)と中井康之さん(写真:『昭和ドロップ!』より)

定岡 元気に代走に出ていったと思ったら、すぐまたアウトになって元気に帰ってくる。ベンチはみんな大笑いだったよね。

槙原 ダチョウ倶楽部の「押すなよ、押すなよ!」じゃないけど、お約束どおりの展開ですね(笑)。中井さんは早くに亡くなられましたが(2014年死去。享年60歳)、『昭和ドロップ!』にゲストで来てほしかったな。

※本稿は、『昭和ドロップ!』(ベースボール・マガジン社)の一部を再編集したものです。


昭和ドロップ!』(著:定岡正二・篠塚和典・川口和久・槙原寛己/ベースボール・マガジン社)

定岡正二、篠塚和典、川口和久、槙原寛己。
昭和に生まれ、昭和に育った4人の元アイドル選手が令和の今、荒々しくも華やかだった昭和のプロ野球を愛あり笑いありで語り尽くす!