藤井聡太さんの活躍に注目が集まった将棋ブームのさなかに刊行され、ベストセラーになったミステリー小説『盤上の向日葵(ひまわり)』。ある殺人事件をきっかけに、貧しい子ども時代を過ごした「異端の天才棋士」と、刑事たちの人生が交錯する骨太な作品だ。2019年にNHKでドラマ化され、主人公の棋士・上条桂介を、若手人気俳優・千葉雄大さんが演じた。本日11月22日に本作が再放送されるのに合わせ、原作者の柚月裕子さんが撮影現場に訪ねた際のインタビューを再掲する。(構成=上田恵子 撮影=本社写真部)
昨夜は緊張してお腹が痛くなりました
柚月 はじめまして。今日、千葉さんの精悍な和服姿を拝見して、真剣に将棋を指されたら怖いくらいに美しいのだろうな、と思いました。主人公の上条桂介を千葉さんがどのように演じられるか、楽しみです。
千葉 ありがとうございます。一人の人間を18歳から33歳まで長く演じるのは初めてなので、本当に貴重な経験をさせていただいています。原作者の方とお話をする機会はあまりないので、昨夜は緊張してお腹が痛くなりました(笑)。柚月先生は、書かれる小説は骨太で熱いものなのに、お会いしてみるととても物腰が柔らかい方で、驚きました。
柚月 お気遣いいただき、ありがとうございます(笑)。私はよく読者の方に「作品とイメージが違う」と言われるんです。男性ばかり出てくる硬派なミステリーを書いているからでしょうね。「こんなポワ~ンとした者ですみません」という感じです。
千葉 最初に『盤上の向日葵』の原作本を手にした時の印象は、「厚いな!」でした(笑)。でも、読み始めると面白くて止まらない。読み終えて時計を見たら、3時間経っていて驚きました。
柚月 時間を忘れて読んでいただけたなんて、何よりのお言葉です。