柚月 私のデビュー作は『臨床真理』という作品なのですが、これも「作家になりたい」というより、自分がどこまで小説を書けているかが知りたくて、新人賞に応募したんです。だから、「勝負に勝った」という体験はまだありませんが、その後も本を出版していただけるのは、私が書いたものを面白いと言ってくださる方がいるからこそ。応援してくださる存在がないと、長く続けるのは難しい仕事ですから。
出演作を観た、母親からの感想は……
千葉 僕は長く続けられていることが演技以外にないので、俳優としてご飯を食べていけるのは、本当にありがたいと思っています。興味がある分野はほかにもありますが、まずは役者の仕事を頑張らないと。
柚月 興味がある分野? 差し支えなければ教えてください。
千葉 (しばらくうつむいて)柚月先生を前にして口にするのは恥ずかしいんですけど、僕は文章を書くのがとても好きで……。
柚月 まあ! 今日はこの場に編集者もいますから、アピールしたほうがいいですよ。
千葉 そんな、とてもとても(笑)。短いエッセイなどは書いたことがあるんですけど、長いものはまだないので。いきなりひとつの作品をゼロから書き上げるのは難しいですよね。
柚月 物語を書くのは、役を作り上げる作業と似ている部分があると思います。お芝居にしても、台本やセリフに命を吹き込むのは役者の方なので、千葉さんがそこに興味を持たれるのは納得がいきますし、作品が完成したら私も読ませていただきます。千葉さんの中身を筆に乗せた時、何が出てくるか知りたいです。
千葉 わあ、どうしよう(笑)。先生のご家族は、先生の小説を読んで感想を言ってくれたりするんですか?
柚月 家で私の本に関する話題はほとんど出ませんね。今回のようにドラマ化が決まった時は、「えっ、千葉雄大さんが出るの?」と興味を持ってくれますが。(笑)