千葉 僕もやりたいことが多いので、11年め以降も幅を広げていきたいです。そういえば……せっかくの機会なので、伺いたいことがあるのですが。

柚月 何でもどうぞ。体重以外は。(笑)

千葉 先生はどうやって小説の舞台となる場所を決めているのですか?

柚月 読者の方にリアリティーをもって受け止めてもらえる場所を考えていると、おのずと候補が頭に浮かんでくるんです。『孤狼の血』を書いた時も、実際にヤクザの抗争が多い土地がどこかを調べて、「西のほうだな」「広島だな」と自然に決まったんです。

千葉 なるほど、興味深いです。

柚月 私からも質問をしていいですか? 千葉さんは今とてもお忙しいと思うのですが、どのようにストレスを解消しているんでしょう。

千葉 疲れている時は、無理をしてでも人に会いに行って、話をするようにしています。一人で家にいると、重力に負けてしまう気がするので。

柚月 それはやはり、役の中に入り込んでいく作業が必要な仕事だからでしょうか?

千葉 どうなんでしょう。でも、シリアスな役を演じている時はカラオケで大騒ぎし、逆にコメディ作品に出ている時は家で静かに映画を観ることが多いです。自然とバランスを取っているのかもしれません。

柚月 プロ棋士も、自身のメンタルをコントロールする術を持っているといいますよね。大事なことだと思います。

千葉 もうひとつ、質問したいことがありました。先生は自分が書きたいものを書く場合と、依頼されて書く場合とで取り組み方は変わりますか?

柚月 基本的にはどちらも同じ熱量で書きますね。読者の方は作り手の事情に関係なく、「面白い読み物」を読みたいはずなので、そこへ向かって仕上げていくのがプロだと思っています。大御所になれば「誰が何と言っても私はこれが書きたい」と振り切れるかもしれませんが、私はまだ精進している身です。(笑)

千葉 背筋が伸びるようなお言葉ですね。勉強になります。今日は本当にありがとうございました。

柚月 こちらこそ楽しかったです! いつか千葉さんの書いた作品を読ませてください。


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