「私の複雑な想いとは裏腹に、記憶の中の渡辺はいつも笑っています」

弱音は一度も聞いたことがない

思えば夫婦喧嘩の原因のほとんどが食事をめぐることだった、というのも、私たちらしいのかもしれませんね。渡辺は食べることが好きだったうえに、お料理番組にレギュラー出演したり、食レポをするような仕事が増えたことで、みるみるうちに太ってしまったのです。

ダイエットしなくちゃと言ってはいましたが、サービス精神旺盛な彼にとっては、簡単なことではありませんでした。お料理を作る人の気持ちを考えて完食する、というのが彼の流儀。

旅公演に出ればおつきあいもあって食べてしまうし、飲んでしまうし。周囲の人に気を使わせたくないということもあったと思います。

せめて家にいる時はと、栄養士の資格を持っている母に教わりながら、食事管理を心がけるようになりましたが、その頃から喧嘩が絶えなくなって。「こんな味の薄いもの食えるか!」「文句言わないで!」といった具合に。(笑)

渡辺はダイエットとリバウンドを繰り返しながらも、意欲的に仕事に取り組んでいました。大きな病に倒れたこともたびたびありましたけど、いつも不屈の精神で立ち上がり、仕事を再開して。「しんどい」とか「つらい」といった弱音は一度も聞いたことがないんです。傍らにいた私は、「この人は不死身だ」と思っていたほど。