芯が強くてブレなかった

私たちは、私が司会を務める歌番組で出会いました。彼は20歳の時にテレビドラマ『太陽にほえろ!』のラガー刑事役に抜擢され、翌年には歌手デビューして「約束」という歌が大ヒットしていたのです。当時から明るくて気取らない人でしたが、私は「なんだか軽そうな人だなぁ」と感じてしまって、初対面での印象は最悪でした。

でも縁というのは不思議なものですね。その後、ドラマで共演し、彼の底抜けの明るさは、人を楽しませたいというサービス精神から生まれているのだとわかり、それからというもの、急速に距離が縮まっていきました。

3年ほどの交際期間を経て結婚したのは、彼が26歳、私が28歳の時です。2年後に長男が生まれ、その7年後に次男に恵まれました。一言で言えば賑やかな家庭なのですが、とにかく渡辺も私も仕事が忙しくて、慌ただしく時が過ぎて行きましたね。

もちろん子どもの教育に関することなどは、その都度、話し合って決めていたのですが、夫婦として足並みが揃っていたかといったら、どうだったのかなぁと思ってしまいます。

たとえば私は、息子たちの前で夫婦喧嘩はしたくないと考えていましたが、主人は「親だって人間なのだから、どんな姿も見せるべき」という考えでした。どちらが正しいとは言えません。

でも私の中には自分のほうが年上だし、ついでに言えば芸能界のキャリアも長いのだからという妙な自負があって、「そうかもしれないね」と言えるだけの器がありませんでした。そういえば散歩する時も、いつも私が先を歩いていたんですよねぇ。彼を隣で、あるいは背後から見るということをしていなかったかもしれません。