どのスポーツモデルも手に入らない

ロレックスの「手に入らない」現象は、いまに始まったことではない。

まずは「コスモグラフ デイトナ」から始まったその現象は都市伝説として広がり、やがて常識として語られるようになった。

『ロレックスが買えない。』(著:並木浩一/CCCメディアハウス)

ロレックス自体は、それを認めることで事態を追認するようなことはしなかったが、特約店と呼ばれるロレックス正規販売店の間で、沈静化のための手が打たれ、その深刻さが明らかになったのが2019年11月のことである。

この月の初めから、ロレックスの全国67の正規販売店のうち、およそ20の店が連携してスポーツ系の人気モデルを指定し、購入制限を設定したのである。

その内容は購入時に顔写真付きの身分証明書の提示を必要とした上で、同一素材で同一モデルの購入は5年間購入不可、ほかの指定モデルは1年間購入不可というものだった。

購入制限の対象はステンレススティール素材のモデルに限られていたが、その内容は以下の人気モデルを網羅していた。

「コスモグラフ デイトナ」「サブマリーナー」「サブマリーナー デイト」「シードゥエラー」「ディープシー」「GMTマスター2」「エクスプローラー」「エクスプローラー2」という顔ぶれである。

これらのモデルはすでに店頭で滅多にみかけることはなかったので、実際は人気モデルのノミネートを意味していると解された。

しかしそれでも、ステンレススティール素材の「ヨットマスター2」「エアキング」「ミルガウス」はこのとき除外されている。またステンレススティール以外の素材、ゴールドやプラチナ、コンビの「ロレゾールモデル」は対象外であった。

つまりは、まだ状況が店頭から全てのスポーツモデルが消えてしまっている現在よりは、深刻ではなかったことになる。