ゲーセン業界でいう「与信」とは

ゲームセンター業界において「与信」は大事な概念なので、少し説明しておく。

一般的に与信といえばクレジットカードを作るときや、借金をするときにどのくらい信用があるのかを調査して「信用を与える」ことを指す。

ゲーセンに熱気があった1995年頃の池田稔さん(写真:『ゲーセン戦記-ミカド店長が見たアーケードゲームの半世紀』より)

だが、ゲーセン業界でいう「与信」とは、取引するにあたり、あらかじめメーカー側に預け入れたお金から決済するシステムのことだ。

この額が多ければ、メーカーは安心して取引ができるので、必然的に「与信」の多い会社ほど、新作や人気のゲームの取引をするときに有利になる傾向があった。

特に『バーチャ2』のような超人気タイトルが出てくると、「与信」の重要性が高まり、結果的にこのシステムがどんどん強固になっていくわけである。

『バーチャ2』の面白さは、対戦プレイの速度と圧倒的リアリティにあった。

これまでにない反応速度、ポリゴンテクスチャを使ったなめらかなグラフィック、まるで本当に相手を殴っているかのような臨場感。どれもが新鮮でスリリングだった。

僕は『バーチャ2』ブームの渦中にいて、当時、手取りで13万~14万円だった給料を『バーチャ2』で全部使い切ったこともある。

基板が買えるくらいお金を注ぎ込んだが、後悔はしていない。