ゲームセンターにこだわる理由

家で基板を買ってプレイすると、なぜかそれほど面白くない。

家だと、電話が鳴ったり、画面に蛍光灯が映り込んだり、親の声がかかったり―環境のちがいのせいか、ゲームセンターでやるより気合いが入らない。

100円を入れてスタートボタンを押すのと、いくらでもタダで遊べるのとでは、プレイの質がぜんぜんちがうのだ。

僕は『スト2』の基板を買っていたけれど、ひとりでコンピュータと戦ったってちっとも面白くなかった。

ゲームはゲームセンターにあってこそ。

対戦相手がいて、生身の人間とのコミュニケーションがあって初めてゲームは面白くなるのだ。

僕がゲームセンターにこだわるのは、この時代の体験が強く影響している。

※本稿は、『ゲーセン戦記-ミカド店長が見たアーケードゲームの半世紀』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。


ゲーセン戦記-ミカド店長が見たアーケードゲームの半世紀』(著:池田稔・ナカガワヒロユキ/中央公論新社)

「ゲーマーの聖地」として国内外で名を知られる「ゲーセンミカド」。中小店が苦境に立たされる中、多彩なラインナップと企画力で愛され続けている。同店の池田店長が、数々の名作を振り返りながら現場のリアルを語る。『ゼビウス』『グラディウス』などシューティングブームの流行から、『ストリートファイターⅡ』『バーチャファイター2』など格ゲーの隆盛、経営の試行錯誤や業界への提言まで、ゲーセンの歴史と未来を描いた一冊。