人生100年時代と言われ、人が経験したことのない未来が待つ世界になりました。先が見えない世の中で、90歳を迎えた作家・五木寛之さんが綴るエッセイからは、日常を新しい角度から見るヒントが見つかるかもしれません。五木さんが、年の始めに『今年こそは』と固く決意しても、結局実現しないことがあるそうで――。
ドクターに生活習慣を指摘され
毎年、年頭に「今年こそは」と決心することがある。
いちばん多いのは「絶対に正午までに起きるようにしよう」という誓いだ。
私はほとんど午前6時ごろに眠りにつく。起きるのが午後の2時前後だ。ときには朝の8時にベッドにはいって、夕方ごそごそ起きだしたりもする。
そんな暮らしを5、60年も続けてきた。
「それはいかん。人間はちゃんと朝日を浴びることが大事です。早寝早起きこそが健康の第一歩ですぞ」
と、有名なドクターに𠮟られた。そこで素直にハイと言わないのが私の悪い癖だ。
「朝日なら、寝る前にちゃんと浴びてますから大丈夫」
などと口では強がりを言っているものの、内心では何とかしなければと思ってきた。