紳士的に遊び歩く不良老人に

精神医学では「うつ病を患(わずら)う最大の原因は愛する対象を失ったとき」とされています。

親や配偶者の死は、人生における最大の喪失体験になります。

『シン・老人力』(著:和田秀樹/小学館)

日本の男性の場合、仕事を通じた人間関係が非常に濃密ですから、定年は大きな喪失体験となって心にダメージを負いやすいのです。実際、精神科医の間では、「定年後にうつ病になる人が多い」というのはよく知られています。

定年退職した後であれば、「人づきあい」に惜しみなくお金を使うべきです。「親(親しみやすさ)」を心がける「シン・老人力」を発揮するのです。

人との会話は、とりわけ前頭葉への刺激になります。

会話から新たな知識や情報を得たり、その場の話題づくりのためにネタ探しをしたり記憶を引き出したり、あるいは相手の気持ちや考えを推し量ったりと、前頭葉はフル回転です。 そして人と飲食をともにすることで感情が浮き立ち、気持ちも若返ります。

人づきあいへの「投資」は、脳の若返りに必須です。

周囲から「毎日、紳士的に遊び歩いている不良老人」と思われるくらいがちょうどいいのです。

もし定年前なら、職場以外の人間関係をつくることを意識してほしいと思います。定年後に始めたい趣味を見つけてそのサークルに加入しておくとか、地元の町内会に入って役員になったり、カルチャースクールに通ったりして、新しい人間関係を構築しましょう。

「会社以外の居場所」をつくっておくことで、定年後の喪失感を回避することができます。