前頭葉の性質を知ることが大切
前頭葉は一般に、快体験の強いときのほうが働きやすいという性質があります。
反面、がまんや過度の節制を強いられるような禁欲的な生活の中では、決まりきったルーティンの思考になって自由な発想ができなくなる傾向があります。
こうした前頭葉の性質を知っておくことは、とても大切です。
日本人の民族的な特徴として、海外からは「がまん強くて真面目で几帳面(きちょうめん)」とも評価されますが、この特徴にはリスクが潜んでいます。
「前頭葉を若々しく保ちにくい」という弱点です。「がまん強くて真面目で几帳面」は、決まりきったルーティンを繰り返す状況にはよく適合します。
しかし、毎日同じスケジュールで、同じメンバーと、同じような行動をしている代わり映えしない日々を繰り返していると、前頭葉は活動することをサボってしまいます。
学校を出て社会人になり、新鮮な驚きに満ちていた毎日も、仕事に慣れて生活にも倦(う)んでくると、前頭葉があまり活動しなくてもいい環境に落ち着くことが多いのです。
定年退職をした後の生活は、輪をかけてルーティンを繰り返す刺激のない日々になりがちです。
それでなくても歳をとるとともに、前頭葉の働きは衰えてきます。60代になったら、意識的に「がまんしない生活」を練習するくらいの心がけが必要です。
周囲から少しくらい顰蹙を買ったって、そこは長く元気でいるための「必要なコスト」と考えましょう。
※本稿は、『シン・老人力』(小学館)の一部を再編集したものです。
『シン・老人力』(著:和田秀樹/小学館)
本書では、世界基準に照らした医学的な方法論だけでなく、30年にわたり、6000人以上もの高齢者と向き合ってきた私の経験則に基づき、「シン・老人力」をつけるための具体的な方法を提案します。