現在、日本人の約3割が65歳以上の高齢者です。高齢者は「生産しないしお金も使わない」「社会の負担となる存在」という世間の声を聞くことも少なくありません。そんななか、「元気で自立し消費者としても大きな存在となっているのが今の高齢層です」と語るのは、高齢者専門の精神科医である和田秀樹先生。和田先生いわく「高齢者層こそ低迷する日本の経済や社会を救うカギ」だそうで――。
高齢者は消費者として見捨てられている
世の中では、高齢者は衰える一方の存在であり、お金も使わない、社会の負担になると決めつける傾向が強いようです。
また、運転免許の返納を迫る声なども典型的ですが、「高齢者は遠慮がちに縮こまって暮らすべきだ」という考え方もはびこっています。
現代の日本では、高齢者は敬意を示されるどころか、ひどく粗末に扱われているように私は感じます。
たとえば、お笑い番組の『笑点』(日本テレビ系)は今も高視聴率をキープし、テレビ局にとって高齢層も大事な顧客のはずです。しかし、今は面白くもない「ひな壇芸人」が集う若者向け番組ばかりに力が注がれます。
これは「高齢者はテレビCMを見てもお金を使わない」と指摘されているからです。つまり、高齢者は消費者として見捨てられているのです。
しかし、今の日本では「衰えるばかりで、お金も使わない高齢者」は少数派でしょう。約20年前に聖路加国際病院元理事長・日野原重明さんが、約10年前に作家の五木寛之さんが着目した「旧来とは違う、元気な老人」は、その後も明らかに増えています。