「ママ、理科ってさ、大人になってから使わないじゃん」
「まあ、そうかな、そうだね、わたしは使いませんね、あまり」
「やる意味なくない?」
わたしも散々、そんな会話を友達としてきた。大人になって使わないよね。やる意味ないよね。
そう言ってやりたいが、今話しているのは、友人ではなくて娘である。ここは一つ、理科に興味を持たせるようなことを伝えておきたい。
「あのね、勉強というのは、わかってきたら楽しくなり、そして、できるようになっていくことで、自信に繋がるということが大いにあります」
「それは理科じゃなくてもいいから」
「ママは、理科をもっときちんとやっていたら、人生が変わっていたと思う時もありますよ」
「どんなとき?」
「そう。たとえば」
絞り出そう、わたし!
「たとえばね、料理をしている時に、どうしてもグラムとかを調べることができなくて、理科してこなかったからかもしれません」
「うん」
「だから、ママの料理は、目分量。グラムも調べられず、目分量」
「ママ」
「ホワッツ?」
「私に理科やらせようと思ってテキトーなこと言うのやめて」
娘は、わたしを一瞥し、ツムツムを再開させた。チカチカジャンジャンの音が車内に響くのを聴きながら思った。
わたしの嘘を見抜くなんて、なんて賢い娘だろう。ああ将来が楽しみ!
※本稿は、『母が嫌いだったわたしが母になった』(著:青木さやか/KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
『母が嫌いだったわたしが母になった』(著:青木さやか/KADOKAWA)
「母が嫌い」だった青木さやか、自身と娘との関係を見つめる新作エッセイ!
母との関係に悩み、現在は中学生になる娘さんを育てる青木さやかが、母との関係を振り返りながら、自身の娘との関係を見つめる。子どもとの関係のなかで大切にしていること、これまでの子育てで悩んできたこと、幸せを感じたこと…。同じように母親との関係に悩む人や、子育て中の読者からの相談にこたえるコーナーも。