写真部門入選『家族』村田昂平(むらた・こうへい)さん
がんと告知された時の不安、がんと共に⽣きる決意、そしてがんの経験を通して変化した⽣き⽅など、⾔葉だけでは伝えきれない想いを絵画・写真・絵⼿紙で表現する「場」があります。がんサバイバーの方の思いが詰まった作品を紹介します。

入院中、たくましく成長していた息子

私は三十歳を過ぎ、息子も二歳を迎えたばかり。仕事も忙しく働き盛りの頃。
ある日、ふと喉に違和感を覚え「風邪か何かかな?」と深く考えずに病院を受診した。
検査の結果は「悪性リンパ腫」という血液のがんだった。

これまで健康そのもので病気で入院などしたことの無かった自分がまさか“がん”になってしまうとは想像も出来ず、目の前が真っ白になり何も考えられない日々が続いた。
入院が始まったもののコロナ禍ということもあり面会は出来ない。抗がん剤治療が肉体的にも精神的にも辛く感じてしまう毎日だった。「病気に打ち勝って元気に家族の元に戻るためには頑張らないと」そう自分を奮い立たせた。

退院の日。すっかり姿が変わってしまった自分の姿を見て息子はどう思うだろうか?ちゃんとパパだと分かってくれるだろうか?などと考えていたけれど病院から出て姿が見えて途端に「パパぁ~!」と言ってくれた。私の入院中にも息子はとてもたくましく成長していた。