宮崎駿監督の10年ぶりの新作『君たちはどう生きるか』が大ヒットしている。監督が手がけたスタジオジブリ作品で、人生が変わった歌手がいる。「あ、る、こう! あ、る、こう!」で始まる映画『となりのトトロ』のオープニングテーマ「さんぽ」。誰もが一度は聴いたことがあるこの歌を歌っているのが、井上あずみさんだ。石川県生まれの歌の上手い女の子は、1983年にアイドルとしてデビュー。今年、芸能生活40周年を迎えた。全国で開催するファミリーコンサートはいつも大人気。海外でもファンが増え続けている。大ヒット曲にも恵まれ順風満帆に見える歌手生活。しかし、そこには意外な歴史があった。(構成◎吉田明美 撮影◎本社・奥西義和)
のど自慢大会を総なめ
私、本当に運がなかったんです。いいところまではいくんですよ。でも最後の最後にうまくいかない。自分の芸能生活を振り返るとその繰り返しでした。
小さい頃から歌は大好きで、2、3歳のころからいつも歌ってましたね。バス停で歌っていると大人から「うまいねえ!」と褒められて、調子に乗ってまた歌う。(笑)
実家は活版印刷の会社で、自宅の1階が仕事場。私は2人の妹の面倒をよく見る「しっかり者のおねえちゃん」でした。
テレビを見てはピンキーとキラーズの真似をしたり。両親も歌が好きで、なんと「家族そろって歌合戦」には2回も出たんですよ。最初は母と私と上の妹で出て、私がリードボーカルで「リンゴの唄」、2回目は三姉妹で「もみじ」を歌って2回とも優勝しました。
小学校4年で地元の児童合唱団に入るのですが、このころから両親の仕事が休みの土日になると、一家そろって車に乗ってでかけるようになりました。行先は「のどじまん大会」。いろんな地域の大会に出まくって、いつも優勝。はっきり言って総なめです(笑)。それがわが家のレジャーだったんです。
どこかののどじまん大会の審査員に、作曲家で歌手の乙田修三さんがいらして、勧められて石川県にある乙田修三歌謡研究所に小学校5年生から18歳までずっと通っていました。